ぼくが生きてる、ふたつの世界
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9月20日より新宿ピカデリー他全国順次公開中
(C)五十嵐大/幻冬舎 (c)2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会
配給:ギャガ
2024年製作 日 (105 min)
監督:
呉美保
オカンの嫁入り
きみはいい子
出演者:
吉沢亮
青くて痛くて脆い
AWAKE
キングダム
運命の炎
キングダム2
遥かなる大地へ
忍足亜希子
僕が君の耳になる
アイ・ラヴ・ユー
今井彰人
ユースケ・サンタマリア
、
烏丸せつこ
、
でんでん
、
原扶貴子
あらすじ:
宮城県の小さな港町。 五十嵐家に男の子が生まれ“大(だい)”と名付けられる。 家族は塗装職人の父・陽介と優しい母・明子、破天荒な祖父・康雄、祖母・広子の4人。 両親は耳が聞こえないため、幼い頃から手話を使って“通訳”をしたり、背後から来る車から守ったりすることは、大にとって“ふつう”のことだった。 しかし、成長するにつれ周りの目を気にしたり反抗するようになり、大は逃げるように東京へ旅立つ…。 ヒューマンドラマ。 ≪伝えられない想いがあふれだす。≫
原作:五十嵐大 脚本:港岳彦 テーマソング:下川恭平『letters』
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「きこえる世界」と「きこえない世界」というふたつの世界の中で育った青年の、心の成長を描く青春ドラマです。 親の耳がきこえないから、大は人生に躓いたのでしょうか? コーダ(聴覚障害者の親を持つ健聴者)は、不幸な子でしょうか? 子を想う親の愛の有難さが伝わってくる作品です。
<スタッフ厳選 超お薦め映画作品!>
★★★★
「コーダ(Children of Deaf Adults)」とは、自分自身は聴覚に障害はないが、耳がきこえない、またはきこえにくい親を持つ子供のことで、日本国内に約2万2000人いるという。1980年代頃から使われ始めた言葉なので、その名称やコーダ同士の横の繋がりがあることを知らない当事者も多いようだ。同じく「ヤングケアラー(家族のために大人がやるような介護やサポートを担う子ども)」という呼び方も、1990年代頃から使われるようになった新しいものだ。本作の原作は、耳がきこえない両親を持つ五十嵐大(1983年生)の自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」である。
舞台は宮城県の港町。主人公・五十嵐大:いがらし・だい(吉沢亮)の家族は、塗装職人の父・陽介(今井彰人)、内職をする母・明子(忍足亜希子)、渡世人風の祖父・康雄(でんでん)、祖母・広子(烏丸せつこ)の4人。父も母も耳がきこえない。幼い頃から大は手話で両親の通訳をし、音を知らせて危険から守ってきた。それは彼にとって「ふつう」のことだったが、成長するにつれ自分が「ふつうの親」の子ではないことを強く意識するようになる。本編の中で、大がいじめられたり、差別されるような描写は少ないが、思春期の大は周囲の「微妙な態度」を敏感過ぎるほど察知してしまう。悪いことはすべて「親のせい」にし、反抗し暴言を吐く、いわば「ごくふつう」の甘えっ子だった。
言語としての手話、唇の動きや表情で読み取る口話、文字を書いて伝える筆談など、聴覚障害者と健聴者がコミュニケーションを取る方法はいくつかあるが、難しかったり、面倒だったり、急いでいたりすると話が通じないので、「コーダ」は親の通訳になる。それをごく当たり前のことと思う子もいれば、注目されるのが恥ずかしいとか、偏見を持たれていると感じる子もいるだろう。一括りにコーダと言っても、育つ環境は様々。大の両親は身体に聴覚以外の問題はあまりなく、祖父母も同居。ずっと親に付いている必要がなかったので、高校卒業後は「ふつうの若者」になろうと大は上京する。
周囲から反対されても、大の両親は子を持つ選択をした。祖父・康雄は、耳のきこえない家族への配慮をあまりしない「ごくふつうのジーサン」。祖母・広子は、聴覚障害者の子を持つ葛藤を既に「乗り越えた人」。母・明子は息子が自分のことを「恥ずかしい」と感じていることを悲しく思いながらも愛情深く接する「優しいお母さん」。父・陽介は、周囲の雑音を気にせず(そもそもきこえないが)家族を養うために精一杯働く「ふつうに立派なお父さん」。
父・陽介が大との会話の中で「お前って可哀そうな子なの?」と不思議そうに言うシーンに、私は吹き出してしまった。そう、大は全然可哀そうな子でも、不幸な子でもない。両親に心から望まれて生まれ、愛情を一心に受けて育った。裕福ではないが貧困でもない。つまり、「幸せな親」を持つ「幸せな子ども」だった。だが、大にはその自覚がなかった。「きこえる世界」と「きこえない世界」というふたつの世界の中で育った青年の、心の成長を描く青春ドラマ。お薦め作品だ。
(象のロケット 映画・ビデオ部 並木)
<作品評価システム>と<高度マッチングシステム>
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