春との旅:作品を観た感想(18)

mini review 11521「春との旅」
★★★ 仲代達也の執念のような演技は高く評価されているが、春を演じた徳永えりが、小林政弘の厳しい演技指導によってまた一皮剥けたように思えた。血のつながりがどうのというよりも、もっと黙っていても通い合うものを、無意識に人々は求めている。武男と春の旅は、結局自分たちが世の中で生存していくことの、「気持ちの在り処」を確認しようとする旅であったかもしれない。…気仙沼の美しい風景が、復興の中でどういうかたちになるのか今はわからない。復興劇の主人公は記憶を持っている人たち。新しい「寄り添い」を懸命に模索していきながら…。
サーカスな日々
2011年3月31日

春との旅
祖父(仲代達矢)と孫娘(徳永えり)が生活に困って北海道の海辺の小屋を捨てて、祖父の姉兄弟を頼って旅をする。孫娘は一人でも生きていけるのだが、祖父には無理だ。無鉄砲な生き方をしてきた祖父は、旅を続けるうちに人生を振り返り安息を得ることができた。その旅に無理やり参加させられて、祖父を最後まで見捨てない孫娘の健気な気持ちに涙が止まらない。列車の中のラストシーンは、ある意味で幸福なのだ。でも、わては溢れる涙を止めることをしなかった。
とらちゃんのゴロゴロ日記-Blog.ver
2010年11月8日

春との旅
★★★★ メインテーマは、老後の生き方と、過ちと責任の問題であろう。それがこの話の主人公である老人と孫娘の、それぞれが抱える葛藤となっている。自分のことは自分が一番よく判っている。せめて親族だけには甘えてみたいが、いい年をして相手の家庭を破壊するわけにはゆかない。みじめな旅になるのは判っているが、もう一度だけでも確認したい。孫娘もそれを承知で一緒についてゆく。愁眉は閉店後の蕎麦屋での会話。ここでは二人の表情とセリフだけが勝負だ。それを見事クリアして、しみじみと家族の絆の重さを感じさせてくれた二人の演技力に拍手・拍手。
ケントのたそがれ劇場
2010年7月6日

春との旅
★★★★ 出演者に名だたる俳優が目白押し。それだけでも十分に見ごたえがある。妻に先立たれ孫娘と二人きりに取り残された老人が、蓄えもなしにこれからどうやって生きていくのか、身内に頼っても今の不景気の時にはいい顔をしてくれず、かといって公的な機関は空きを待つ人が多数。どうしたらいいのか、と厳しい現実を突きつけられ暗い気分にさせられまが、この映画は、忠男をどんなことがあっても面倒見ようとする孫娘を配することで、明るい春の希望の光が射してくるようで実に感動的。見どころがあちこちに転がっていて「秀作」といえる。
映画的・絵画的・音楽的
2010年6月24日

【映画】春との旅
★★★★★ この映画を支えているのは、「良質な脚本」と「良質な俳優」とそれを生かす演出。老いてなお圧倒的な存在感のある主演の仲代達矢に、自分を捨て「春」という役に完全になりきっていた徳永えり。特に二人の歩き方がすばらしく、ただそれを見るだけでそれぞれどんな人生を歩んできたのか想像できるのが素晴らしい。最後に報われた形になった忠男だが、春の立場になってみるとこれが最良の終わりかただったのか判らない。確かにこういう形でしか終われない映画だとは感じていたが、もっといい別の終わり方はなかったのか?と、考えてしまう自分がいる。
新!やさぐれ日記
2010年6月24日

『春との旅』 手帳の住所は正しいか?
本作は、老人や家族を話の中心に置きながら、何よりも人生を描いている。血の繋がった家族といえども大人の甘えは許されない。みんな自己責任でどうにかこうにか暮らしているのであり、忠男が兄弟を頼らざるを得ない境遇に陥ったのも、自己責任であると喝破される。はじめこそ観客の関心は忠男に向けられているものの、やがて兄弟たちの知られざる人生模様に固唾を呑むことになる。何年も会っておらず、他人も同然に疎遠になっていた者が、それぞれの家の事情を垣間見るのは辛い。だが、方々を探し歩いたからこそ、青い鳥が近くにいることに気づける。
映画のブログ
2010年6月16日

「春との旅」 小林政弘
近くにいる人の温もりを感じたくなる映画。役者がいい。どれも適役で見事なキャスティングで安心して観れる。しかし、仲代達矢の芝居が大袈裟で気になった。夢ばかり追いかけた甘ったれた頑固ジジイ役としては、はまり役ではあったのだが、どうにもわざとらしい。地味で単調なロードムービーながら、シンプルな反復の姉兄弟たちとの再会の旅、そしてクライマックスを迎える。役者たちの超クローズアップとワンカット長廻し芝居。繰り返される駅のホームや乗り物の旅。その移動こそが人生なのかもしれない。余韻が残るラストだったら印象も違ったのに残念。
ヒデヨシ映画日記
2010年6月2日

春との旅
このような映画が公開されているなんて知らなかった。とんでもないキャスティング。みんな主役を張ってきたような人ばかりで、内容もまた良い。こういう映画こそより多くの映画館で公開してほしい。年をとると兄弟の関係もすっかり希薄になってしまってるし、それぞれ事情があるからせっかく兄弟の元を訪ねても追い返されてしまう。そして最後の訪問先では…これが一番ぐっと泣けるポイント。これほどの俳優でなければ演じ切れなかったのかもしれないと思うほど辛辣な内容。現実的な気がする。悲しいけど…。老いた自分をもっと考え直そうと思わされた。
ゴリラも寄り道
2010年6月2日

春との旅
怒りっぽくて我がまま。甘ったれの老人と、その祖父の生活をたった一人で支えてきた十代の孫娘の心を辿る旅―。二人暮らしのそれまでの生活が、どこか封建的な主従関係を思わせながらまた2人の人生の長さの違いをみせつける。その甘えと怒りは、自ら捨てて選び取ってきた人生の中で、初めて捨てられようとしている男の困惑であり、孫にとっては、捨てられて選べなかった人生の頼りなさが表れている。忠男が訪ねる兄弟とのやりとりも空白の長さを思わせるけれど、肉親ならではの感情もあり…終盤の2人が可愛かっただけに、別な終わり方が見てみたかった。
to Heart
2010年6月1日

春との旅
春が給食係として勤める小学校が廃校になり、兄弟に世話になるしかないと春が言ってしまったがための旅なのだけれど、ことごとくアウト。彼らが冷たかったわけではない。それどころかみんな忠男を心配していたし、反りの合わない兄でさえ、忠男のが悪くなければ追い出しはしなかったろう。地方の共同体の崩壊、自壊、同時に高齢化社会の孤立化のどうしようもなさを表しているようにも見え、ただ「春」だけが希望のように見える。一番印象に残ったのは漁師役の小林薫。無愛想で憂鬱そうな表情がこの映画のトーンを象徴している。
佐藤秀の徒然幻視録
2010年5月24日

春との旅(’10)
端的な申し出に、それぞれの兄弟やその家族が、それなりの冷めた距離・摩擦・情を持って2人に接する様が、パターン的なコミカルさや、切なさあったり。後半、春と別れていた父親との対面で、やや饒舌すぎな気もしたのですが、普段若くして祖父の"保護者"役もして、思春期の家庭の出来事のつもり積もった感情を吐き出して、カタルシスになったのは良かった、と。一番印象的だったのは、道中、春の決意表明。ただやはり、そのまま一直線にハッピーエンド、というには何かハラリ、と落ちるようなラストの締め方とは思いました。
Something Impressive(KYOKOV)
2010年5月24日

*春との旅*
訪ねた先の兄弟の状況はかなり苦しいものであったり、元々ソリが合わなかったり…色々とあるわけです。安そうなホテルや旅館を転々としながら彼らを訪ねる様子…見ていて胸が詰まります。後半、春に関わる展開になります。あ〜そうだったのですか…色々な事情もわかり、、そして、、ラストはいいです。感動的です。人間誰もがトシをとりますから、老いとはどういうことか考えるためにも若者にも見てほしいです。仲代さんといえば邦画の巨匠全員に愛されたといってもいいほどの役者さん。あまりにうまくて役とはいえ少々さびしくなってしまいました。
Cartouche
2010年5月24日

「春との旅」
★★★★ 春という女性の、心の成長の物語であるとも言える。全体的には小津安二郎監督の[東京物語]を思い起こさせる。家族の絆の脆さ、老人の老後の人生、人間のエゴイズム、そしてロードムービー…と、共通する要素は多い。一番老人に優しい心遣いを示す伸子のキャラクターも、[東京物語]の紀子(原節子)を思わせる。それにしても、俳優が豪華である。やや難点を挙げれば、小津映画をリスペクトするなら俳優が喋るシーンは律儀なまでにバストショットでその表情を捉えた小津演出を見習って欲しい。ともあれ、さまざまな事を考えさせてくれる力作である。
お楽しみはココからだ
2010年5月23日

春との旅
★★★★ 当然ながらというか、突然の申し出はどこの兄弟たちにも断られるのですが、断る側を演じる俳優陣がまた名優揃い。それぞれの歩んできた人生を背負ってのセリフはそれが軽口であっても実に重く響きます。話の流れ的にはひたすら"生きる苦しさ"が描かれているようで、それじゃ春たちには良いことなんて何もないのか?とすら思えてしまうほど。しかしそんなことはありませんでした。思えば忠男のこの旅も、結果的に彼自身が自分を愛してくれる人間を探すための旅だったように思えてりません。しかし…。とても気になる終わり方でした。
LOVE Cinemas 調布
2010年5月21日

『春との旅』
★★★★ 松竹が得意とする懐かしい家族のドラマで人と人のつながりや温かさが伝わる。なぜこの作品を見たかというと、仲代達矢はじめキャストが素晴らしい俳優ばかりで演技だけ見ても満足できるし、美しい景色もいい。このベテランの演技見たら今の若い俳優がいかに下手くそかわかる。仲代達矢さんが挨拶にこられて徳永えりさんに、今時の薄っぺらい女優にならずにもっと高いところを目指せと言った言葉に共感した。
Mooovingな日々
2010年5月21日

春との旅
二人の旅の行く末がとても切なかったです。そこには様々な現代社会の問題が反映されていました。それにしても、仲代達矢さんと徳永えりさんのコンビが良かったです。怒りっぽくて我がままで自己中な忠男。ほとんど3歳児のノリで孫娘をこき使います。そんな甘えん坊な祖父に怒りの感情をぶつけつつも、見捨てられない19歳の孫娘・春。こんなに我がままでも一緒に生きていこうと思うものなのだなあとちょっと羨ましかったです。観終った時、春と一緒に旅が出来た忠男は幸せものだなあとしみじみ思ってしまいました。実家に電話しうかな、と思った1本。
とりあえず、コメントです
2010年5月18日

『春との旅』お薦め映画
★★★★さすがの俳優陣。親子、家族、老後の問題を、静かに鋭すぎる切り口で描いた社会派ホームドラマ。老いた身の哀しさ、寂しさ、生への執着を捨てきれない情けなさが痛いほど伝わってくる。
心をこめて作曲します♪
2010年5月13日

春との旅
★★★ 冒頭から気まずい空気が漂い、二人の旅が前途多難である予感が、、。忠男と春がずっと二人で暮らしてきたことは会話からは勿論、それ以外でもわかる部分が沢山ありました。訪ね歩く忠男の兄弟たちとのやりとりで春の人生とは何なのか…を春と共に考えさせられ、同時に忠男と共に、老後の過ごし方も考えさせられました。これは、まさに核家族の問題なのでしょうか。舞台が田舎でなかったとしても起こり得ることだと思います。たとえ別々に暮らしていても自分を思い遣ってくれる人がいるのだと実感できる老後を送りたい…。そんな風に思いました。
☆試写会中毒☆
2010年4月26日


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